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永井”ホトケ”隆/tbt(tRICK bAG tRIBE) No.40
 

中古レコード店巡礼:CD レコード店に入ると私は夢遊病のような状態になると以前
書いたことがあるが、特に中古レコード店は私にとって時間の意識がなくなるヤバ
イ場所です。中古レコード店は安く、探していた念願のレコードを手に入れること
ができるという利点もあり、知らなかったレコードに出会える場でもあります。し
かも「これ、めちゃええんとちゃうの?」に出会った瞬間というのは静かなトラン
ス状態とでも言いましょうか、一瞬世間から離脱した「現世離脱」の状態に入りま
す。その状態が波が曳くように去ると「早く帰って家でゆっくり聴きたい」という
気持ちが湧いて来ますが、一方で「今日はまだええレコードに出会えるのではない
か」という欲深い煩悩が暗雲のごとく心に広がります。実際、いいレコードに出会
える時というのは2枚、3枚とまるで奇蹟のごとく私の前に現れる。そんな時持参し
た金が少なく、「このレコード取っといてや」とレジに預けキャッシュ・コーナー
に走ったこともあります。また、若き日にサイフの中にも、銀行にも金がなく、友
達に電話して借金を頼み、しかもその場を離れると誰かにレコードを先に買われて
しまう恐れからその友達にレコード店まで金を持って来させたことも・・。そして
、数人の友達に連絡しても金の調達が出来ないときにそのレコードを同じ趣味の人
が見ないだろう別のコーナー(例えばアニメ・ソングのコーナー)に隠して、翌日
買いに行ったこともあります。「東映アニメソング」と「懐かしのアニメソング」
の間にハウリン・ウルフのアルバムを挟んでおくようなことです。その時ドラエモ
ンのレコードを買いに来た子供とその親がウルフのジャケ写真を見て何と思うかな
んてことは考えていません。こうすればまず先に買われてしまうことはありません
。自分のこととは言え、なんと人間の欲とは底知れず恐ろしいものでしょうか?こ
んなこともありました。ある日、中古レコード店で探しあてたレコードを横に置き
ながら他のレコードを探していると、刺すような鋭い視線を感じた。横を見ると、
それまで強力なスピードでレコードを次から次へと見ていた男がパタッと手を休め
、私の横に置いてあるレコードを見ていました。すると、男はぐっと私に近寄り指
を差して「それ、買います?」と訊いた。その時その男が身体から発している異常
なテンションに私は少したじろいだが、意を決して「は、はい、買います」ときっ
ぱり言った。その後その男の異常な波長を背中に感じつつレコードを探していたの
だが、ふとその男のテンションが殺意に変る妄想を見てしまい、私は足早にレコー
ドを持ってレジに向かい逃げるようにレコード店から去ったのでした。・・・とい
うのはめちゃ誇張していますが、超高級中古レコード店で7万円のアルバムを7千円
と桁をひとつ間違えてレジに持って行き、店員に「7万です」と言われたが、金がな
かったので前金を渡し取置きしてもらい翌日残金を握り締め1枚7万のレコードを買
った男もいるくらいです。クレイジーと言えばクレイジーな世界です。私はそんな
高価なものは買ったことがありませんが、その超高級中古レコード店から出た瞬間
に「火つけたろか!」と冗談を言ったことはあります。あまりに高く1枚も買えずく
やしかったのです。そんな訳で、悲喜こもごも、いろいろおもろいことがある中古
レコード店巡りの話を今回から紹介しょう。
7月某日、曇り午後3時下北沢某中古レコード店(私が最もよく行く店)にて。まっ
先に吸い寄せられるようにレコード盤「新着Blues Soul」コーナーへ。
Jimmy Witherspoon/Midnight Lady Called The Blues/800円:20枚ほど見たところ
でブルーの総ラメのぴったりしたパンツに同じラメのシャツを着た黒人のお姉ちゃ
ん(おっとヒールが金だ!)がこっちを見ているジャケットに手が止まる。お姉ち
ゃんは金の靴のまま大きなソファーに横になる寸前の姿勢でグッと眼差しをこっち
に向けている。「今夜は帰らないで」と誘っているようでもあるが、どちらかと言
うと「わたしを抱ける?」と・・ちょっと恐い。色っぽいがちょっと安っぽい。こ
の手のジャケットは大好きだが、中身がめちゃいい時と最悪の時とある。アルバム
・タイトルが「ブルーズと呼ばれる真夜中の女」か・・このお姉ちゃんが・・ねぇ
。しかし、そのお姉ちゃんの上にJimmy Witherspoon(ジャズ・ブルーズの大御所シ
ンガー)のでかい文字。そして、参加ミュージシャン名がおおっ!デヴィッド・ニ
ューマン、ハンク・クロフォード、えっ!バーナード・パディ・・あら!ウイルバ
ー・バスカム、そしてなんと!ドクター・ジョン。その時やや「現世離脱」へ。そ
して裏を見ると作詞家ドク・ポマスの写真が・・・えっプロデュースがドクとドク
ター、ドクドクやん!完全離脱。値段800円!・・昇天。1986年ニューヨーク録音。
中身?悪いはずかなかろう!頭が高い!しかし、コーヒー一杯800円もする店がある
その一杯分で、こんな素晴らしい音を一生聴くことができるなんて!私は家でイン
スタント・コーヒーを飲みながら聴いた。しかし、この日は更に安い出物が・・。
Ray Charles/Brother Ray/300円:以前から何度か目にしたことのあるレイ・チャー
ルズのアルバムだが、なんと300円だ。新宿-高円寺往復の電車代。百円ショップで
3個購入可(消費税抜き)。いま300円では銭湯も入れない(現在400円)。それでレ
イ・チャールズを約40分聴くことができる。しかも何と!自分でもカヴァーして歌
っているレス・マッケーンの"Compared To What"が最初に入っている。おっ、B面に
はザ・バンドの"Ophelia"が。こういう安いものは盤質に気をつけなければならない
が、日本盤で盤質Bランクだが傷はないみたいだ。購入決定。なんか、今日は当たり
がいいかも知れんなぁ・・てな調子で時間を忘れてしまうわけです。




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