MY NOTES > My Feeling For The Blues > No.74




74-狂ったように凝れば凝るほど・・・・「レス・ポールの伝説」/DVD「レス・ポールの伝説」
(PCBP-51703 ポニー・キャニオン)(photograph参照
 

私が現在いちばん欲しいギターはギブソン社のレスポール・ゴールドトップというものだ。
いま愛用しているテレキャスターも弾きこなせていないのに何を血迷ったことを言ってるんだ・・また、ストラット・キャスターやギブソン335もうまく扱えずほとんど家で弾くだけの状態なのに何がレスポールだとお叱りを受けても返す言葉はない。でも、欲しいゴールドトップ。
その話は置いといて「レスポール」だ。
ここ2ヶ月ほど私の中で盛り上がっているのはビートルズのモノ・ボックスのこととレス・ポールのことだ。
きっかけはこのHPのMy Notes/My Feeling For The Bluesにも書いたが「レコーディング・スタジオの伝説」という本を読んだことだった。
その本の中に多重録音の世界を開拓したり、エコー・チェンバーなど録音機材を発明したり・・・・と、録音技術の話の中で彼の名前が何度も出てくる。有名スタジオ・エンジニアに混じって録音についての本に名前が頻繁に出てくるそんなミュージシャンはまずいない。そして、もちろん彼はレス・ポールという永遠不滅のエレクトリック・ギターを発明した人であり、ギタリスト、ミュージシャンだ。数々のグラミーを獲得しヒット曲もたくさんあることも知っている。女性シンガー、メリー・フォードとデュオのアルバムも1枚持っている。そして、少し前に亡くなったことも知っている。しかし、本当のところ私はレス・ポールのことを何も知らなかった。
こんな偉大な、面白い、楽しいミュージシャンのことを何も知らなかった。

レス・ポールに私があまり近づかなかった理由のひとつは、彼にブルーズ色があまりなくカントリー色の強い人だったせいだ。
以前も書いたことがあるが私は昔カントリー・ミュージックが生理的に好きではなかった。
レイ・チャールズのカントリー・カヴァーアルバムでそのカントリー嫌いもかなり緩和されたが、いまでも「ああ、これはダメだ」というカントリー・ミュージックがある。それが原因していてあまり興味が持てずにいたのだ。一枚持っているアルバムもあまり一生懸命聴いたことがなかった。

それが今年の夏、レコード店をうろうろしている時に「レス・ポールの伝説」というDVDを見つけた。
最近、頭の中にレス・ポールというワードがいくつも散らばっていたこともあってそのDVDを入手した。
いや、いや、いや・・・・まいった。認識不足。不徳のいたすところだった。
こんなに素晴らしくクレイジーな人だとは思わなかった。
音楽に対して、音に対して、録音に対して自分の求めるものを徹底的に追求したレス・ポールに対して私はまったく認識不足だった。
中身はこれから観る人のために言わないことにするが、「レス・ポールの伝説」はひとりの人間の無垢な生き方を描いた映像として素晴らしいものだ。迷いながらひとつのものをずっと求めている人にとっては支えを、自分の生き方を探している人には何かヒントを与えてくれるそんな映像だった。
そして、レス・ポールの音に対するその追求の徹し方は厳しい学者のようでもあり、でもごはんを食べるのを忘れて夢中になって遊んでいる子供のようでもある。そういう何かひとつにクレイジーなくらい夢中になっている人が私は好きだ。
だから愛する女性に言ってしまうレスの次のような言葉にも思わず笑ってしまう。
「君にはすまないけど君は2番目なんだ。僕にとって1番はギターなんだよ」
止まると死んでしまう回遊魚みたいなもので止まれなくなってしまい、愛するメリー・フォードにも三行半を食らう。
つまり、この人はある意味大馬鹿者だ。でも、とても幸せ者だ。
93才、亡くなる直前までニューヨークのクラブで演奏を続け、そこにキース・リチャーズはじめいろんなミュージシャンたちが彼の音を聴きにきてそして音を一緒に交わす・・・そんな様子も収められている。素晴らしいギター爺だ。

このDVDをゲットした翌日、頭を垂れて再びレコード店に赴きレス・ポール&メリー・フォードの3枚組をゲット。その3枚組はこの夏から秋にかけて私の昼下がりのヘビー・ローテーションになっている。やはり音に執着した人だけにいま聴いてもその深みのある音は色褪せていない。秋の空にとてもうまく溶け込んでいく音だ。
もうひとつ大きなものを得た・・・・・・メリー・フォードの歌だ。無理のない唱法、シルクのような輝きと伸びのある声に耳が釘付けになってしまった。
DVDに何度か「カーペンターズ」の兄、リチャードが出てきてレスとメリー・フォードの音楽について話をするのだが、それを観ていてカレン・カーペンターのあの歌のルーツはメリー・フォードだったのか・・・と独断した次第だ。

そして、このDVDを観終わったあとムッシュの「ゴロワーズを吸ったことがあるかい」の一節を想い出した。
「そうさ、何かに凝らなくてダメだ。
狂ったように凝れば凝るほど
君はひとりの人間として幸せな道を歩いているだろう」
それでムッシュにこのDVDをプレゼントすることにした。


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