MY NOTES > My Feeling For The Blues > No.76




76-『パットン・荷風』
 

しばらくライヴ、ツアーがないので読書にいそしんでいる。
2.3冊の本を取っ替え引っ替え読むのが私の読み方だ。すごくのめり込んで一冊を一気に読むこともあるが、大抵はまったくジャンルの違う本を少しずつ読んでいく。だからデスク、ソファ、ベッド・・たまにトイレといろんなところに読みかけの本が置いてある。
いまは角田光代著の「幸福な遊戯」(この作家の『対岸の彼女』はすごく良かった)と「志ん朝の落語1男と女」とムッシュにいただいた「ビートルズカバーソングの聴き方/恩蔵茂著」の三冊を同時進行して読んでいる。
いままで「つまらない」と思って途中で読むのを止めた本もたくさんある。買ったからと言って無理して最後まで読む必要はないと思っている。
音楽も映画もそうだが、読書はハマってしまうとどんどんその世界に入り込んでいく快感がある。自分が思っていたことや言いたかったことが的確に文章として書かれていると自分の心がさあっと開けて陽が射し込んでくるような気分になる。また、いい本を読んだ後は日常世界にもどるのが嫌になり、しばらく呆然とその世界に浸っていたい気持ちになるものだ。

雑誌の類いである漫画、ファッション雑誌、週刊誌はほとんど読まない。興味がないからだ。
最近買った雑誌は、雑誌というには立派だが「東京人」(都市出版)。永井荷風の特集をやっていたので買った。
若い頃、私と苗字が同じことに親近感を持って「墨東綺譚」(墨は正しくはサンズイがつくのに私のPCがバカで変換しても出て来ない)や「ふらんす物語」、「断腸亭日乗」などを読んだらこれがすごく面白かった。

永井荷風は放浪のブルーズマンのようだ。

拘束されるのを嫌いひとりでいろんなところへ行き、気ままにいろんなことを書き残した人だ。
今回の特集のタイトルも「愉しき孤独」。
20代半ばにアメリカやフランスにひとりで旅をし、東京に住んでからもひとりで下町を中心に日々歩き回り、70才過ぎてからはストリップ劇場に毎日のように通い楽屋でストリッパーたちに囲まれて嬉しそうにしている写真などが残っている。一度結婚もしているが一年で離婚し、その後芸者さんを身請けしたり女性関係はなかなか派手な人だったが、ひとり暮らしを愛してタイトル通り孤独を愉しんで生きた人だ。80才の年に自宅でひとり心臓発作で亡くなっているのを家政婦さんに発見されたという。
残された小説や日記はやはりその生き方を反映していて孤独だから書けたものだし、孤独を愉しみ喜んでいる気持ちが出ている。そして、自由な気風にあふれ解放されている。
ひとりで旅を続けていろんな目に遇い、いろんな女性と関係を結び、孤独だけれども気ままに生きて自由を感じさせるブルーズを残した戦前カントリー・ブルーズマンたちに荷風はどこか似ている。全財産をバッグに入れていつも持ち歩いていたというのも大作家というよりブルーズマンぽい。浅草のストリップ小屋でストリッパーたちに囲まれて三味線を弾いている楽しそうな荷風の姿はそのまま、ライトニンやサン・ハウスに置き換えてもいい。
ブルーズ好きな人は荷風が好きになると思うが・・いかがか。
ちなみに永井荷風はデルタ・ブルーズの祖、チャーリー・パットンより少し年上でパットンより長生きしたが活躍していた時期はほぼ同じだ。
パットンを聴きながら荷風を読む・・・いいかも知れない。       2009年11月某日


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